インドネシアにおける電子調達と電子入札
デジタル化が急速に進む現代において、多くの企業は競争力と効率性を高めるために、デジタル環境の課題に適応していく必要があります。
ビジネス競争の一つである政府や民間のプロジェクトにおける調達プロセスが円滑かつ効率的に行うために電子調達や電子入札などのデジタル化が導入されています。
電子調達と電子入札とは何か
オンラインで実施されるこの調達では、財務省、国有資産省(BMN)、調達省の電子調達サービス(LPSE)が使用されています。通信・情報技術設備を利用することで、従前の調達プロセスより電子プロセスの効率性と透明性を高めています。
一方、製品やサービスの提供者を選定する電子入札でのプロセスでは、より広範な事業者が対象となり、資格のある事業者であれば指定された時間内に入札書を1枚提出するのみで申請が可能です。
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インドネシアでの電子入札と電子調達に関する法律
こうした電子調達と電子入札における概念、規制等を理解することは、市場拡大に向けた新たな機会の創出につながるため多くの企業で重視されています。
現在、物品/サービスの政府調達は、主に、政府調達に関する2018年大統領規則第16号の改正に関する2021年大統領規則第12号(「PR 12/2021」)によって規定されています。特に企業にとって、PR 12/2021における重要なポイントを理解することは極めて重要です。以下が主な規制の内容・変更です。:
- 調達アクターの役割の変化
Pjabat Penerima Hasil Pekerjaan(Pj/PPHP)の削除は、調達関係者の相互作用やコミュニケーション方法に大きな影響を与えています。 - 調達準備段階での契約種類の追加
ターンキー契約や実費精算(コストプラスフィー)契約など、建設工事調達契約の種類を追加されました。これにより調達準備段階でのより柔軟な形態での対応が可能となりました。 - サプライヤー選定方法の変更
電子購買では、電子カタログだけではなく、オンライン・ショップも含めて選択肢が広がりました。これにより商品・サービスの供給者の選び方が大きく変わることが予想されます。 - 違反入札者に対する行政処分
落札者の確定後、契約締結前に規制違反などの特定の理由で落札者に対する行政制裁が実施される場合があります。次章にて具体的な事例を紹介します。
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プロジェクト入札 談合事例
2021年2月1日、ボゴール州政府は、IDR 97,974,310,650のプロジェクト値でKandang Roda-Pakansari道路を修復するための建設プロジェクトの入札を発表し、2022年2月15日に、PT Lambok Ulinaが主落札者となり、PT Tureloto Battu Indahが補欠落札者となりました。
しかし、PT Lambok Ulinaの勝利は、PT Lambok Ulina、PT Tureloto Battu Indah、および仲介役を演じたと疑われる実業家、Lai Bui Min間での談合疑惑によって世間の注目を集めました。
談合とは、競争入札の参加者どうしが落札者と価額とを前もって決める不公正な話合いを意味します。
談合疑惑が生じた要因には以下の内容があります。:
- 会社の借入: PT Lambok UlinaとPT Tureloto Battu Indahは、入札に参加するためにLai Bui Minから会社を借りていた。
- 入札書類の署名: PT Lambok Ulina と PT Tureloto Battu Indah の入札書類は、同じ当事者によって作成された。
- 類似のインターネットアドレス: PT Lambok Ulina と PT Tureloto Battu Indah は同じインターネット・アドレスを保持していた点。
- 入札書類の類似性: PT Lambok UlinaとPT Tureloto Battu Indahの入札書類が、価格、仕様、実施スケジュールに関して類似している点。
この談合疑惑は企業競争監督委員会(KPPU)に報告され、調査が実施されました。調査・審査の結果、KPPUは、PT Lambok Ulina、PT Tureloto Battu Indah、Lai Bui Minが独占禁止法に関する1999年法律第5号第22条に違反していると判断しました。
2023年12月8日、KPPUは最終的にライ・ブイ・ミンに15億ルピアの罰金を課し、決定が法的拘束力を持ってから30日以内に国庫への納付を要求しています。
上記の事例では、電子調達システムが効率的かつ透明性の高い調達の実現に向けて重要な役割を果たしていたといえます。従来の調達システムは煩雑で、透明性が低く安全性が担保されていなかったため、本事例のような不正を見つけることは難しかったと考えれます。
しかし、この事例は、電子調達システムが存在するにもかかわらず、違反や談合のリスクが依然として存在するという事実を浮き彫りにしており、入札書類の操作、借用企業、談合の可能性には引き続き注視していく必要があるでしょう。
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違反の防止
入札談合は、政府調達プロセスを操作するために、度々、不正に実施されてきました。KPPUによれば、ビジネス競争の違反に関して報告された80%は入札案件であり、不公正なビジネス競争が、様々な規制の回避が可能な方法を通じて発展してきてしまったため、特に物品/サービスの調達において、従来の方法では当問題を完全に克服することは困難であると説明しています。
したがって、現デジタル時代のすべての利害関係者にとって、商品やサービスの調達に関するプロセスや規制を徹底的に理解することが極めて重要であり、他の企業や入札参加者に損害を与える違反を回避する必要があります。各企業が可能な防止策には主に下記があります。:
- 物品/サービスの調達、特に電子調達及び電子入札に関する最新の規制及び規定の順守
- 電子調達と電子入札プロセスの深い理解と適用される規制の遵守
- 電子調達や電子入札の利用に関する専門サービスの利用
- KPPUなどの監督機関と緊密な関係を築き、調達部門の規制や商慣行に関する最新情報の取得
ボゴールでの入札談合事件は、従来システム上での違反防止を目的にした電子調達システムの導入にもかかわらず、違反のリスクは依然として発生する可能性があることを示唆しています。
すべての利害関係者はビジネスにおけるデジタル時代におけるレピュテーションリスクや財務的なリスクを背負わないためにも、規制を十分に理解し遵守することが非常に重要です。弊所ではデジタルリスク専門の弁護士を擁しており、企業様の抱える問題に対して的確にお手伝い致します。お困りの際にはお気軽にご相談くださいませ。
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